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ソフトブレーン株式会社
代表取締役会長 宋文洲 氏

85年に北海道大学大学院に国費留学。天安門事件で帰国を断念し、札幌の会社に就職するが、すぐに倒産。
学生時代に開発した土木解析ソフトの販売を始め、92年28歳の時にソフトブレーンを創業。経営を通して日本企業の非製造部門の非効率性を痛感した。
98年に営業など非製造部門の効率改善のためのソフト開発とコンサルティング事業を始めた。
2000年12月に東証マザーズに上場。成人後に来日した外国人では初のケースとなる。
2004年経済界大賞・青年経営者賞を受賞。2005年6月1日には東証1部上場を果たし、業界最大手に成長。
営業改革を訴えた著書「やっぱり変だよ日本の営業」は、トヨタ自動車の張富士夫社長自身が購入し、営業系の役員を中心に配布。7万部に迫るベストセラー&ロングセラーに。


学生時代から起業を志していましたか?
いいえ、全く考えていませんでした。


では、なぜソフト開発の中小企業に就職されたのですか?
それは、その企業の社長さんが私を凄く誘ってくれたからです。また、社長の近くで働いていれば、経営についていろいろ学べると思ったからです。あまり大きな会社に行ってしまうと、先輩の先輩の先輩まで皆サラリーマンですから、間近で経営を学ぶことは出来ないと考えました。


そこでは経営を学ぶことは出来ましたか?
はい。『社長になりたい!』と意識していたわけではないのですが、やはり経営者というのは魅力的ですからね。近くで見て学びたかったんです。


起業するまでの経緯を教えてください。
まず、就職した会社が倒産しました。その後、大学院時代に自分で作ったプログラムを商品用に修正して売ってみようとしたら、『個人とは契約出来ない』ということだったので、自分で会社を作って、その会社名義で売りました。出来ちゃった婚と同じですね(笑)


ご自身で営業していた時、苦労したことはありますか?
全く苦労してないです。なぜなら、自分が好きで、良く理解している物を売っていたからです。従来の営業のように、上司から『売って来い!』と言われて、自分の好きでもない物を売りに行く営業とは違いますからね。


創業当初から上場を視野に入れていましたか?
創業当初は全く視野に入れていませんでした。しかし、何年か経営しているうちに、いろいろな経営者の方々と付き合いをするようになると、上場のことが話に出て来ます。そうなると、自然と自分も上場を意識するようになりました。


東証1部に上場された今のお気持ちを教えてください。
嬉しいことは嬉しいですよ。ただ、これは終点ではないですから、『一つ区切りを付けたかな』という気持ちです。そして、『これを新しいスタートラインにしなくてはならない』という気持ちです。


起業してから最大の壁は何ですか?
自分自身の壁を感じたことですかね。自分がものの見方を間違ってしまい、他人のせいにしてしまった。結果、効率が悪くなったわけですよ。つまり、最大の壁は自分の中にありました。


HP上で、会長は『経営を通じて日本の非製造部門の非効率性を痛感した』ということで、特にお聞きしたいのですが、日本企業の『営業』の一番の問題点は何ですか?
マネジメントが存在しないことです。営業であったら、マネジメント的な視点が要らないという人がいます。これが一番の問題ですね。あたかも営業というのは、消費者の心理を燻っていれば良いとか、情に訴えれば良いとか、仲良くしていれば買ってくれるとかこういう考えは絶対にしてはいけません。


『営業には精神論的な発想ではなく、組織的な仕組みが必要である』ということですが、その仕組みとはどのようなものですか?
組織的な仕組みの最も簡単な発想では、個人が一生懸命頑張ったから売れたとか、気持ちを込めて頑張ったから売れたとかを一回忘れます。実際にお客様が買ってくれた理由というのは、客観的に存在するわけです。お客様が買ってくれた理由というのは、営業マンの熱意とは関係無いはずです。ですから、企業として、どのような入り口から入って、どの出口から出ればお客様が買ってくれるのかという設計図をまずちゃんと描くべきです。そういった設計図が完成する為には、どの地点で、どのようなスキルが必要であるのかが分からなければなりません。必要なスキルが分かったら、今度は誰がそのスキルを持っていて、どの地点で誰なら時間が空いているのかを調査します。それを合わせることで、設計図が完成するわけです。繰り返しますが、組織的な仕組みとは、まずちゃんと設計図を描くことから始めなければならないのです。それから個人の動きを決めなければなりませんし、その動き自身は決して特定の人しか出来ない動きにはしないことです。なぜなら、その特定の人が病気になったら大変ですからね。だから、あるスキルを使える人が組織の中に1人か2人しかいないようだったら、もっと社員を育成しなければならないし、新たに採用しなければならないです。


会長自身がもしこの組織的な仕組みの重要性に気付いていなかったら、今頃どうなっていると思いますか?
どっかの地方の中小企業で、『お前頑張れー!』とか『やる気ないのか!』とか言っていると思います。


そのような仕組みを作り上げるために、御社は何から着手されましたか?
社員と幹部の相互理解ですね。社員が楽に仕事が出来るように努めました。社員に『もっと残業しろ!』とか『もっと頑張れ!』とか要求してはいませんから。『もっと頭を使いなさい』とは言いましたけど。ソフトブレーンが1部上場まで来る為に、このことはとても大切でした。


創業当初から、そういった仕組みは徹底しておられましたか?
はい、徹底していました。お客様にコンサルタントとソフトを提供している手前、我々自身は本物でなければいけません。まず自社で結果を出して、『やはり本物だな』とお客様に思って頂けないと買って頂けないですから。


例えば、僕達のような学生が起業する際、精神論的な発想で営業をしてしまいがちだと思いますが、それについてはどうお考えですか?
創業当初は、それも必要かも知れません。数人の組織では、仕組みとか言ってはいられないですからね。残業なんて仕方ないです。ただしあまりにやり過ぎて、他の仲間に嫌われてはいけません。


経営者にとって必要な資質を3つ教えてください。
一つは、意欲ですね。これが無い人は何も出来ない。二つ目は、忍耐力ですね。必ず壁にぶつかるから、その時でも諦めずに前に進む力が必要です。三つ目は本質を見極める冷静さですね。


2000年に事業転換されて、赤字が出た時期があったと思いますが、そのように会社が危機的な状況になった時も、このような資質が重要だったと言うことですよね?
そうですね。会社が危機的な状況になると、社員の中には『この会社ヤバいんじゃないのか?』と言って逃げ出す人も出て来る可能性があります。しかし、それによって、リーダーである社長が動揺したり、冷静さを失ったりしてはいけません。社員が辞めて行くのはとてもしんどいことですが、社員に不安を与えない為にも、そこはじっと耐えて明るくしていなければなりません。『この借金は、俺がちゃんと返済するんだ!お前らの借金じゃないんだぞ!心配するな!』と笑いながら言えばいいんです。


起業を志す学生にメッセージをお願いします。
僕は、これからの日本は平等な社会ではなくなると思います。チャンスは平等にあるけど、結果は平等ではなくなる。なぜなら、チャンスが平等にあれば、意欲や能力のある人間が当然上に行きますから、堀江さんや三木谷さんのような人は。そうすると差が出て来るんですよ。先ほど言った3つの資質も含めて、弱い人と強い人がいますからね。でも、『弱い人が出る』=『弱い人を切り捨てる』という意味ではないんですよ。強い人がどんどん稼いで上に行って、弱い人を援助したり、引っ張ったりすればいいんですよ。だから学生さんの中にも強い人、弱い人がいると思いますけど、それは『差』ではなく、ただの『違い』なんだと前向きに受け止めて欲しいです。


東証一部上場おめでとうございます。本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。(ペコリ)


  >ソフトブレーン株式会社 代表取締役会長 宋文洲 氏

  デジパ株式会社 代表取締役 桐谷晃司 氏

  株式会社ラストリゾート 代表取締役社長 高橋透 氏

  レッドフォックス株式会社 代表取締役社長 別所宏恭 氏

  株式会社ネオキャリア 代表取締役&CEO 西澤亮一 氏