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株式会社ラストリゾート
代表取締役社長 高橋透 氏

1969年生まれ。大学卒業後、野村証券に入社。
1年で退社し、当時の同僚3人で家庭教師派遣業を始める。その後も人材派遣業などいくつかの事業を経験。1998年30万円の資金でラストリゾートを創業。単なる留学斡旋会社ではなく日本初の海外生活サポート事業という新しい事業領域を確立させ、わずか3年で業界トップクラスに育て、年商も20億円を突破。海外の拠点は10を数える。最近では個人のみならず、法人需要も取り込み、業界での確固たる地位を築いている。ヤフートップページのバナー広告で更に知名度と企業イメージをアップさせ、若者なら誰もが知る有名企業となる。


高橋社長の一言
「明確なビジョンを」
「常に誠実に」
「自分の感性を信じる」


どのような少年時代でしたか?
東北の岩手県生まれで、のどかな田舎でのんびりと過していましたね。北上川の川辺に家があり、毎日釣りをしてから学校へ行くというような子供時代でした。虫や山、魚や川が好きで、ビジネスとは全く無縁の生活。私の父親は、普段の仕事に加え、労働運動などにも積極的に携わっていた人で、書棚にはマルクス・レーニン主義などの本がズラリ。周りと比べ、少々独特な教育環境の中で育ったのかもしれません。


ラストリゾートを起業するに至った経緯を教えてください。
私は大学を卒業して野村證券へ入社しました。本当は3年続けたら辞め、起業しようと思っていました。でも結局、1年経ったときに、同期の人に誘われ、同期の人と3人で教育関係のベンチャービジネスをスタートさせました。ビジネスはうまくいっていましたが、その反面、犠牲にするものも多かったのです。

私は25歳で結婚をし、子供も早く生まれていましたが、休みもなく朝から晩まで働いているため、子供との遊ぶ時間もほとんどとれない状態でした。こんな人生ってどうなのだろう?と思い私ひとりが抜ける形で一旦辞め、実家のある東北の仙台に帰ってしばらくのんびりとしました。
しかし、このまま過ごしていたのでは、世の中に復帰できなくなってしまうのではないか?周りのみんなはすごく頑張っているだろうに、僕だけ…などという焦りがだんだんと募ってきました。

そんな時、野村證券の先輩だと言う年配の男の人から「一緒にビジネスをやらないか?」と声をかけられたのです。おもしろいかもしれないと思い話に乗ってみたものの、それは、取り込み詐欺で、全部ウソだったのです。半年くらいの間に、それまで蓄えた財産も全部なくなってしまいそのビジネスに投資した分だけが借金として残ってしまいました。26歳で妻子も養えない状態になってしまったのです。騙した人を見つけ出して復讐したい、このまま泣き寝入りしたくないというマイナスのベクトルですが、強いエネルギーがそこにはありました。どうせビジネスをやらないと借金をゼロには戻せない。ならば、騙した人と同じビジネスをやってその人を上回るような会社にしてみようと思ったのが発端です。

私を騙した人間がやっていたビジネスは、英会話学校でした。NOVAもジオスもある今のご時世、地元の小さな英会話学校が生徒を集めるのはすごく大変なことでした。でもその人の会社はうまくいっていたのです。なぜだろう?と思い調べてみると、広告の出し方が違っていました。「留学しませんか?」という広告で、それをみて集まってきた人たちに英会話のパッケージを販売していたのです。つまり、「英会話をしませんか?」では名もない会社に誰も来ないが、「留学しませんか?」だと、響くお客さんがたくさんいるということなのです。
一方、その頃の私はパスポートも持っていない、英語もまったくできない、それまでの経歴の中で海外に接点のあったことなんて何にもないという状況だったので、留学なんてものはどうやっていくのだろう?と考えるところから始まりました。
私が最初にやったことは、アメリカ大使館に電話をかけたことです。それからJTBの窓口に行き、「留学・英会話」と書かれているNOVAへも行きました。その後仙台から東京へわざわざ出てきて、大手留学斡旋会社へも行きました。しかしそのいずれも、留学の相談はおろか、何も相談をすることさえできない状態だったのです。これはもしかすると、ものすごく面白いマーケットなのではないかとそのとき思いました。
みんな留学したいという気持ちがあるのに、どこに相談していいのかわからないというのは、それだけ、業界が未熟だということです。マーケットはすごく潤沢なのに、同業他社がほとんどないから、競争原理が働いていない。サービスの質はすごく低いのに、価格は高いという顧客のニーズをまったく満たしてない遅れている業界だということがわかったのです。

今までとまったく違うやり方でいけば、ぜったい差別化できる。もしかしたら、すごく成功できるかもしれないと。それが立ち上げの経緯です。


社名に対する思い
事実、私は脱サラしたわけですが、野村證券を辞めるときすごく迷いました。それは、怖いからです。やってみたいけど、すごくハードルが高く、しかも自分にとっていいことなのか悪いことなのか判断がつかない。

自分には、たまたまきっかけがあってそのハードルを越えることができ、そこから、自分の思う人生がスタートしました。留学も同じようにハードルが高いことだと思います。海外のことがよくわからないし、情報も世の中にほとんどない、そしてお金もすごくかかる。みんな行ってみたい行ってみたいというけれど、ハードルが高いために、みんなそこで、ちょっとお金が…今就いている仕事が…などと理由を探し出すのです。
しかしとんでみたら、何でもないことでそこには、違う世界が待っています。それをみんな求めているはずなのに、ハードルが高いが為に諦めてしまう。そういう意味で、脱サラと留学はあまりかわりないなと思ったのです。
そうだとすると、自分は一つだけ自信を持っていえることがあります。ハードルを飛ばない人生なんてつまんないぞということです。そのハードルを飛べなかったら、またなにかやりたいことがあっても、結局同じように、理由をつけてやめてしまうということです。欲しいものも手に入れない、やりたいことにも挑戦しない、そんな人生はつまんないと思います。

脱サラもそうですが、ハードルを飛び越えてみると結構何でもなかったりするのです。留学もやってみたら、結構なんでもないと気づけることが人生にとってプラスだと思っています。私はそれを、お客さんにココロのそこから伝えることができると思ったのです。海外へでて自分の世界を変えようと思っている人に対して、日常のその閉塞感から脱出することで人生を変えようよ。というメッセージを届けようと思ったのです。

なので、社名はラストリゾート。最後の切り札という意味です。誰かが背中を押してくれてハードルを飛ばしてくれないとその人の人生って変わらない。
そういう勇気をだすための最後の切り札としての存在になってあげたいという思いがあってこの社名をつけました。


どのように仲間を集めましたか?
創業はもちろん一人でやりました。このビジネスが、本当にうまく立ち上がるのかわからない状況だったので、無責任に引き抜けないから、無理に集めていません。

今みたいに求人広告をだして人がたくさん集まるというのは、なかなかありえないことで、初期のメンバーは、ほとんどが昔からの友達だったり、何かの機会で一緒になった人たちなど何かしらの知り合いです。


起業してから今まで経営をされてきて一番辛かったことは?
外的環境だとテロがあったり、イラク戦争があったり。商売柄、お客さんを海外に送っているのですが、海外で、お客さんが不慮の事故にあうことだってあります。
新規でやった投資が大失敗したりと・・・そのように、日々辛いことはありますが、実は、それを辛いと思ったことは、あまりありません。

学生のイメージで、うまくいっているビジネスは、やることなすことがすべてうまくいっているというのがあるかもしれませんが、それはぜんぜん違います。
最初から狙ったとおりにいくことなんか、まずないでしょう。失敗の連続というか、失敗するほうが当然という感じです。だから、そのたびに辛いと思っていたら何も前に進まないし、会社というものは作れないし、落ち込んでいてもキリがないので、それを辛いと思ったことはありません。


なぜ逆転の発想ができるのか?
世の中の大多数の人が正しいといっているからといって、本当に正しいかどうかわからない。
世の中の大多数の人が気持ちよいといっているからといって、それが自分にとって気持ちよいことであるかはわからない。

こうした考え方を根底に持っているからではないでしょうか。みんながこうするから自分もこうしようという考えは持っていません。客観的な事実があれば、それを材料にして、自分で考えたいというのが、私の考え方です。
これはある意味、感性だと思います。そして自分なりのやり方でやってみようという発想、それだけです。これはビジネスにとって大事だと思います。ビジネスがうまくいくかどうかは、他とうまく差別化されるかどうかにかかっている。他を見習ったら、結局2番目か3番目にしかなれないと思うのです。


経営者にとって必要なものを3つ教えて下さい。
1.ビジョンを掲げる
人によって違うと思いますが、自分のとって大事なことは、ビジョンをしっかりと掲げるということです。
尊敬するベンチャー企業の経営者たちは皆、カリスマ性があります。そのカリスマだけで人を寄せ集めることができ、そして人をうまくマネジメントできるのです。
しかし、私にはそのカリスマ性がない。コンプレックスでした。では、私はどうやって会社を推進させていこうか?と考えたとき、ビジョンをしっかりと示そうと思ったのです。自分の個人的な魅力に人が集まらないとしても、ビジョンをしっかりと掲げれば、人が集まってきてくれるのではないかと。
だから、私は、会社がまだ小規模の頃から、先々のビジョンを明確に掲げてきました。それが自分にとっては大事なことだったのです。

2.誠実さ
ビジネスとは関係ないかもしれませんが、いつも誠実にやっていないと世の中から認められないというのは現実問題としてあります。
例えば、いい加減な人付き合いをしていたら、人は集まってきてくれなかっただろうと思います。嫌なやつだと思われていたら、手伝ってくれなかっただろうと思います。取引であっても、取引してみて嫌な感じだったらおそらく、次の取引はないと思います。だから、いつも誠実でいることは大事だと思うのです。
ビジネスとは、一瞬でおわるものではなく、継続していかなければならないものです。だから、いつもどんな人に対しても誠実に対応していくことは大変重要になってくると思うのです。

3.営業力
自分にはないが、営業力だと思います。特に創業時の会社というものは、社長が営業してお金を持ってこないと会社というものが立ち上がりません。
人をとることも営業だし取引先を開拓するのも営業。もちろん、本業である、お客様に商品を買ってもらうというのも営業です。そういう営業のセンスや力がないといけないと思います。何もない中からお金を集めてくる力はすごく大事なことだと思っているので、それがなくて、起業なんてものは無理だと思います。


起業を志す人へメッセージをお願いします。
起業は、ぜひやってもらいたいと思います。今の時代、1円でも会社が作れる時代です。リスクさえ負えば、起業なんてものはいつだってスタートすることができるのです。

スタート時に、起業するか否かを悩んだりするのではなく、起業したあとにどんなことをするか?
どんなことを社会へ還元していくか?
そして、本当に自分の叶えたいものはなにか?

などというところに、目線を移していったほうが良いと思います。たとえば、留学業界。全体でみても、ここ10年の売り上げは芳しくない。しかし、このなかでラストリゾートは確実に伸びています。“事業のやり方”にこだわっているからです。ですから、「どういった商売を選ぶか」というより、その選んだ商売の中で「どんな風に事業をやるか」といったことに重点を置いて欲しいのです。そういうことを含めてぜひ起業はやってほしいなと思います。


  ソフトブレーン株式会社 代表取締役会長 宋文洲 氏

  デジパ株式会社 代表取締役 桐谷晃司 氏

  >株式会社ラストリゾート 代表取締役社長 高橋透 氏

  レッドフォックス株式会社 代表取締役社長 別所宏恭 氏

  株式会社ネオキャリア 代表取締役&CEO 西澤亮一 氏